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紫のバラの人<嘘
○月△日(×)天気:くもりのち晴れ

 夕方オフィスに戻ると、銀色のワゴンの上に花束、その前にイリヤがいた。
「花屋からあんたに届いたんだ。差出人は不明。今のところ薬物反応や爆発物が仕掛けられてる痕跡はナシ」
「毒蜘蛛や毒サソリも?」「ああ」
「病原菌は?」
 イリヤはぎょっとして、花に触れようとした手をひっこめた。
「緊急連絡、セクション5……」
 僕は彼の手からさっと内線電話をもぎ取った。
「冗談だよ。何か仕掛けられてるわけないんだ。注文したのは僕なんだから」
「は?」
 僕は手の平で顔をつるりと撫でた。
「つまり、時間を節約しようと思って、今日のデートに……」
 イリヤは口を開けて何か言おうとしていたが、くるっと背を向けて大股にオフィスを出て行ってしまった。

 電算室にこもりっきり出てこないイリヤを、僕はデル・フロリアの前で辛抱強く待った。
「ナポレオン?デートはどうした」
 街灯に彼の不審そうな顔が照らされている。
「今から君とね。それと、この花は僕のパートナーに」

(代筆:かえる)

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